投資家のあなたの遺産どう相続するの?
(Photo by Sharon McCutcheon on Unsplash)
こんにちは。master_kです。
私は、株式(上場、非上場含め)、投資信託、外貨預金など様々な資産運用を行っています。
今回は、私が死んだら遺族がどう遺産相続するのか?を記事にまとめました。
master_k家の場合、妻はどの口座に私の財産がいくらあるかすら把握していません。これでは妻や子供が困るだろうと思ったからです。
今回の記事は、私自身の調査結果と、三井住友信託銀行様に相談した結果をまとめています。
その結果、相続のポイントは、①資産の計上、②株式などの相続手続き、③所得税の納付、④相続税の納付であることが分かりました。
ちなみに私の場合、①資産は3,069万円、②株式等の相続は各金融機関、証券会社に依頼、③所得税の申告不要、④相続税はかからない(控除内)という結果でした。
投資家にとって、特に注意したいのは、③相続税の納付が必要な場合に、資産を時価で計上して税務署に申告する必要があることです。
つまり、遺族が時価評価額を算出(または証券会社に依頼)しなければいけません。非上場株式の場合は、もっと大変です。
というわけで、結論として、「投資家は生きている内に漏れ抜けなく資産内容を伝えておくか、あるいは書き記しておき」、遺族が困らないよう配慮することをおススメします。
こうしておけば、最も厄介な相続税の申告・納付の必要性も分かりますし、相続漏れも無くすことが出来ます。
資産運用しているあなたの相続は大丈夫ですか?準備をしていないなら、参考にしてみて下さい。
それでは本文です。
目次
きっかけ
私が相続について考えたきっかけは、生命保険の契約です。
「今、死んだとして、妻と子供にいくらのお金が残るか?、それは十分か?、保険はいくら必要なのか?」
と考え始め、「そもそも株や外貨預金が残るけども、ちゃんと相続できるのか?」という疑問が浮かびました。
また、相続した後も、外国株などがある場合、二重課税を避けるために確定申告が必要になります。
「うーん・・・これは生きているうちにちゃんとしとかないと、家族が困るぞ」と思い、この記事をまとめました。
資産の棚卸と相続方法
相続方法を考える前に、まずは自分の死亡時の資産を棚卸しました。
妻が把握している、銀行の預金を除いたものです。
その額は3,069万円。改めてまとめると、思っていた以上に多くのお金が残ることに気づきました。これらを漏れなく相続してもらう必要があります。
内容 | 機関 | 評価額 [万円] |
妻の認知 | |
資産有無 | 資産額 | |||
外貨預金 | DBS銀行 | 43 | × | × |
確定拠出年金 | 勤務先 | 207 | ○ | × |
確定給付年金 | 勤務先 | 700 | ○ | × |
生命保険 | 保険会社 | 1000 | ○ | ○ |
上場株式 | MONEX証券 | 1119 | ○ | × |
非上場株式 | FUNDINNO | 0 | × | × |
借金 | - | 0 | - | - |
計 | 3069 | - | - |
資産有無:妻が口座の保有や、資産の有無を知っている場合は○
資産額:妻が資産額(相続する額)を知っている場合は○
相続方法は、管理・運用している会社に連絡して、移管手続きを行うだけです。
最重要ポイントは10カ月以内に手続きを行うことです(そうしないと、相続することが出来なくなります)。
他、注意が必要な点を述べます。
①上場株式
私が使用しているマネックス証券の場合、相続時に遺族がマネックスに口座を開く必要があります。
また、特定口座は特定口座、一般口座は一般口座に移管されるので、特定/一般口座の両方を使っている方は、特定口座に移管しておくのが良いと思います
※一般口座は自分で確定申告が必要です。相続後に株式を売却しなかった場合、遺族に手間がかかります。
また、複数の証券会社に口座がある場合は、それだけ移管の手間が増えるので注意が必要です。特にIPO投資を頻繁に行っている方は、必然的に口座を多く持つので、大変です。
②非上場株式
私はFUNDINNOを通して非上場株式を保有しています。
しかし、FUNDINNOのウェブサイトには、保有者が死亡した場合の移管手続きの情報が載っていませんでした。
「移管出来ません」とは言われないでしょうから、それなりの手続きを踏めば可能でしょう(多分!)。
③海外口座
私の場合は、シンガポールの銀行に外貨預金があります。基本的に日本語に対応していないため(日本語が分かるスタッフはいる)、口座移管も英語で行う必要があります。
日本語対応不可の金融機関に口座がある場合もやはり、遺族の負担になりますね。
さて・・・ここまでは私のケースを見ました。
次に、あなたの場合を見てみましょう。これを機に一度整理してみるとスッキリしますよ。
●資産/負債の部
資産から負債を引いた額が遺産の評価額になります。
まずは資産です。
資産の部
内容 | 機関 | 評価額 [万円] |
妻の認知 | |
資産有無 | 資産額 | |||
銀行預金 | ○○○ | × | ||
外貨預金 | ○○○ | × | ||
確定拠出年金 | ○○○ | × | ||
確定給付年金 | ○○○ | × | ||
生命保険*1 | ○○○ | × | ||
上場株式 | ○○○ | × | ||
非上場株式 | ○○○ | × | ||
不動産 | ○○○ | × | ||
その他証券*2 | ○○○ | × | ||
車/貴金属等 | ○○○ | × |
*1 生命保険の掛け方によっては、相続税ではなく、贈与税や所得税がかかります。
*2 例えば、ゴルフ会員権、リゾート会員権等
※生命保険にかかる税金について詳しくはコチラ
どうですか?思っていたよりたくさんの資産がありませんか??
次に負債について説明します。
負債には、以下のようのものがあります。
負債の部
内容 | 機関 | 評価額 [万円] |
妻の認知 | |
資産有無 | 資産額 | |||
借入金 | ○○○ | × | ||
税金*1 | ○○○ | × | ||
未払い費用*2 | ○○○ | × | ||
葬祭費用*3 | ○○○ | × |
*1 死亡後に納付が必要な所得税など(後述)
*2 公共料金、医療費、買掛品(事業上の未払い金)など
*3 葬儀会社に支払った費用、通夜告別式の飲食費、心付け、寺社への布施、読経料等、埋葬・火葬・納骨費用。
なお、墓地、墓石は、死後に購入した場合、費用に含めることが出来ない。
※葬祭費用について詳しくはコチラ
葬式費用の範囲 ~控除対象になるもの・ならないもの~|相続税の申告相談なら【税理士法人チェスター】
さて、注意が必要なのは以下です。
・相続の放棄(借金が多い場合などに、資産も負債も放棄する)は手続きが必要です。
・不動産や事業による収入がある場合は、本人が死亡した時点での収入の確定申告と所得税の納付が必要です。
また、期限も要注意です。相続は10カ月以内に行えば良いのですが、これらはより早く行う必要があります。
相続の放棄:死亡してから3カ月以内に行う必要があります。
(これ以降は借金も相続してしまいます)
所得税の納付:死亡してから4カ月以内に行う必要があります。
次に所得税の納付について、説明します。
●収入の部
収入には以下のようのなものがあります。これらの収入は一定の基準を超えると、遺族が4カ月以内に確定申告する必要があります。
収入の部
内容 | 金額 |
事業収入 | ○○○ |
家賃収入 | ○○○ |
雑所得 | ○○○ |
配当所得 | ○○○ |
譲渡所得 | ○○○ |
雑所得:FX、暗号通貨、ブログ収入、アフィリエイト収入、ヤフオク収入、バイト等
配当所得:一般口座で株式を保有している場合。米国株などの二重課税を所得税控除で取戻す場合
譲渡所得:一般口座の株式売却益がある場合
※雑所得について詳しくはコチラ
※米国株の二重課税の回避について詳しくはコチラ
複数の収入源があると、本人死亡時の所得税のまとめ、申告はかなり面倒そうです。
以上のように、資産・負債・収入について説明しました。残すものが多いと、いろいろ手間がかかりますね。
通常の銀行の場合は、通帳があるので、遺族が相続漏れを起こす心配はしなくて良いのですが、
投資家は証券会社やネット銀行を使いますよね。これらは通帳がないので注意が必要です。事前に伝えておかないと、遺族が郵便物や書類を遺族が確認・連絡して資産内容を照会するところから始めないといけません。
家族のため、せめて金融機関名と口座内の資産額だけでもまとめておくことをおススメします。追加で、口座番号と連絡先、日本語対応の可否を書いておけば、遺族がかなりラクになりますね。
加えて、所得税の納付が必要な場合は、課税項目(配当所得、雑所得etc)と、収入が入る口座と明細をまとめて一覧にしておくと良いかもしれません。
特に一般口座に株式がある場合は、特別口座に移管するだけで、確定申告不要になりますので移管を強くおススメします。
相続税はかかるのか?
さて、お次は相続税です。
結論から言うと、私の場合は現時点の資産であれば、基礎控除内に収まっており、相続税がかかりません。この場合、相続税の申告も不要です。
※基礎控除と相続税申告不要ついて詳しくはコチラ
それではあなたの場合を見てみましょう。
●課税対象の計算方法
課税対象の計算方法は以下になります。先ほど計算した資産と負債額を使います。
課税対象=(資産-負債)
※生命保険には法定相続人×500万円の非課税枠があります。
※退職金には法定相続人×500万円の非課税枠があります。
※法定相続人については次の項目参照
※生命保険/退職金の非課税枠について詳しくはコチラ
●基礎控除
続いて、基礎控除の具体的な額を確認してみましょう。
法定相続人 | 控除 [万円] |
||
配偶者 | 子 | 計 | |
なし | なし | 0 | 3000 |
1 | 1 | 3600 | |
2 | 2 | 4200 | |
3 | 3 | 4800 | |
あり | なし | 1 | 3600 |
1 | 2 | 4200 | |
2 | 3 | 4800 | |
3 | 4 | 5400 |
基礎控除:3000万円、法定相続人一人につき、控除600万円追加。
養子:実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人まで法定相続人を追加出来る。
兄弟姉妹、甥、姪などは相続可能だが、基礎控除はない(全額課税される)。
というわけで、master_k家の場合、妻と子供1人ですから、4,200万円までは基礎控除がありますね。
課税対象は基礎控除以下ですから、現時点で相続税の申告・納付は不要ということです(喜ぶところなのか、相続財産が少ない!と悔しがるところなのか、悩みどころです)。
私は今後も資産運用を継続していくので、4,200万円を超えたら、いろいろ考えないと遺族が面倒になってきます。
●その他の控除
なんと、配偶者には1億6,000万円の「配偶者の税額軽減」があります。
これはつまり、相続人死亡⇒配偶者が相続⇒配偶者が死亡⇒子が相続という相続の流れが前提なので、配偶者にはあまり課税しないということですね(ここで課税すると、両親の相続財産が子供に渡るまでに極端に減ってしまう)。
ただし、
・特別控除を受けるためには、相続税の申告が必要になります(基礎控除と異なり申告不要ではない)。
・配偶者特別控除で課税を逃れたとしても、いずれ子供が相続する場合は、申告と納税が必要になります(配偶者が使わなければ、ですが)。
その他の控除は以下です。
未成年者控除 | 20歳に達するまでの年数×10万円 |
障害者控除 | 85歳に達するまでの年数×10万円 |
特別障害者控除 | 85歳に達するまでの年数×20万円 |
※配偶者特別控除、その他の控除について詳しくはコチラ
課税対象額が控除を超えれば相続税の申告が必要です。
どうですか?あなたが死亡した場合、相続税の申告が必要ですか?
申告が必要なリッチメンは以下が必要になります。
●課税対象額の評価
相続税の申告を行う場合は、資産の計上が必要になります。
この場合、問題になるのは株式と不動産でしょう。
現金資産は計上するだけで良いですが、これらの資産は時価評価額を算出する必要があるからです。
不動産の評価については割愛し、株式の場合の評価額算出方法を説明します。
CASE.1 上場株式
4種類の方法で算出可能です。
このうち一番低い額を使用することが出来ます。
相続開始日の終値 |
その月の終値の月中平均額 |
その前月の終値の月中平均額 |
その前々月の終値の月中平均額 |
※相続開始日:あなたが死亡した日
※上場株式の評価について詳しくはコチラ
CASE.2 非上場株式
非上場株式は、上場株式と異なり、株式市場で評価額が決まりません。
あなたが大株主でなければ、配当還元価額方式で計算します。
※大株主かどうかの判定は複雑です。一般的には、5%以下の保有率かつ、経営者一族でなければ該当しないと考えてOKです。
(国税庁より引用)
同族株主等以外の株主が取得した株式については、その株式の発行会社の規模にかかわらず原則的評価方式に代えて特例的な評価方式の配当還元方式で評価します。配当還元方式は、その株式を所有することによって受け取る一年間の配当金額を、一定の利率(10%)で還元して元本である株式の価額を評価する方法です。
(引用終了)
※大株主以外の株主の場合の評価方法について詳しくはコチラ
配当還元価額方式の実際の計算方法は以下です。
●2円50銭以上の配当金がある場合
一株当たりの株式価値は以下で計算します。
なんのことはない、2年間の配当金平均額の10倍の価値があるという計算です。
一株当たりの配当金は企業に問い合わせれば教えてくれるでしょう。
なお、計算は資本金額や配当総額からもっと複雑な計算で算出しますが、結論は変わりませんので、企業に一株当たり配当金を問い合わせた方が早いと思います。
※非上場株式の配当還元価額方式の計算方法について詳しくはコチラ
●配当金が2円50銭を超えない場合
この場合は配当金を2円50銭として、一株当たりの評価額を以下の式で計算します。
この場合は、資本金額と発行済株式総数を教えてもらう必要があります。これも企業に聞けば教えてくれます。
試しに、私の保有している株式の評価額を計算すると・・・12,653円でした。少っ。
会社名 | 株数 | 資本金/1株 [円] |
評価額 |
オールユアーズ | 2 | 9303.5 | 9304 |
SKR | 400 | 14.2 | 2836 |
ID Cruise | 10 | 102.7 | 513 |
計 | 12653 |
なかなか計算が面倒ですね。遺族が税金や株に詳しくなければ、計算するのは大変でしょう。
というわけで、私は60~70歳くらいになったら、非上場株式は処分してしまいたいと思います。
まとめ
最後にまとめです。
・投資家は生きている内に、金融機関、企業と残高をまとめておいたほうが良い。
・遺族は、被相続人が死亡したらすぐに財産の整理をする。相続放棄は3カ月以内、所得税の納税は4カ月以内なので、なる早で行う。
・相続は、金融機関、企業に連絡すれば、やり方を教えてくれる。
・相続税を納付する、配偶者特別控除を使う場合は、資産の計上が必要。特に不動産、非上場株式を持っていると、計上が大変。
謝辞:
今回の記事作成にあたり、"ゆう 美少女投資家"さんから多大なる気付き、アドバイスをいただきました。この場でお礼を述べさせて頂きたいと思います。
ゆうさんからは、①複数口座の手間、②資産残高への金融機関の連絡先、口座番号の付記、③信頼のおける人物への遺族へのフォローなどの対応について教えていただきました。
私などより、余程真剣に考えられており、頼りになる方です。
しかも、見ての通り美少女です。
ゆうさんのブログは以下です。中国株に積極的に投資をされているので、興味のある方は是非!
いかがでしたでしょうか?
今回はこれで終わりです。
R.I.P
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