JT株を誰が売っているのか? 株価はどこまで下がるのか?
こんにちは、master_kです。
今回は、みんな大好き!JTの株価考察です。
直近終値2,274円(2019/9/10)となり、ピーク時の約半額となったJTの株価、
一体誰が売っているのでしょうか?
答えは外国法人です。買い支えているのは国内の個人と金融機関なので、
この先、外国法人の売りがひと段落すれば、株価は堅調になると考えています。
しかし、外国法人の本格的な売りは、2017年に始まったばかり、足元ではまだまだ株価は落ちる可能性が高いと思います。
タイムリーにも、9/11付で、米国FDAが風味付き電子たばこの一時販売停止と、許可を得たもののみ販売を再開するというニュースが発表され、逆風が吹いています。
米、電子たばこの販売規制へ 若者間の流行を問題視: 日本経済新聞
また、JTのたばこ研究職として採用されていた筆者の体験談もオマケとして書いています。
それでは本文へどうぞ。
今回はデータ豊富なのでブクマをオススメします!
目次
JTの株価と配当利回り
JTの株価が冴えません。
2015年~2016年の4800円代をピークに、下落の一途をたどっています。
(正確に言えば2015/8/3の4,848円と2016/2/1の4,850円のダブルピークです)
JT株価の推移(Googleより)
このため、直近ではJTの配当利回りは、脅威の6.5%に達しています。
この極端に高い利回りは、JT株が不人気であることを示しています。
なぜここまで株価が下がるのでしょうか?
業績が悪いのでしょうか?
JTの業績
JTの業績を記録が残っている限り、調査してみました。
※JT有価証券報告書データを筆者まとめ
※2012年以降米国会計基準に変更。2011年以前と直接比較はできない
※2012年以降は売上高⇒売上収益(売上にたばこ税等を計上しない)、経常利益⇒税引前利益に変更
※決算月を変更したため、2014年はデータが2つある
2002年以降のデータを見ると、
・2002~2011年まで売上高も利益も伸びている。
・2012年以降売上高(正確には売上収益)も利益も横ばい。逆に言えば底固いとも言える。
ということが分かります。
この業績を見ると、JTの株価がピーク約4,800円から2,274円(2019/9/10終値)まで半減している理由が理解できませんね。
誰がJT株を売っているのか?
株価が下がっているということは、株を売っている人間が多いということです。
それでは、誰がJT株を売っているのでしょうか?
再びJTの有価証券報告書で、保有者の推移を調べてみましょう。
※JT有価証券報告書データ(所有者別状況)を筆者まとめ
これを見ると、政府公共団体(ほぼ財務大臣)が常に一定の比率を維持しつつ、
2014年頃から、外国法人が保有比率を減らしている(35%⇒20%)ことが分かります。
しかも、急激に保有比率を減らしたのは2017年以降です。
2014~2016年 35⇒31%(3年で4%減)
2017年 31⇒27%(単年で4%減)
2018年 27⇒20%(単年で7%減)
JTの株価がピークを迎えたのは2015~2016年でしたから、外国法人が急激に売り始めたタイミングと一致しているように見えますね。
つまり・・・JT株を売り、株価を下げている正体は"外国法人"です。
株は無限ではありませんから、外国法人の売りもいずれひと段落するでしょう。
JT株を買っているのは、日本の個人と金融機関ですから、その後は外国法人のような売り圧力がなくなり、株価は堅調かもしれません。
外国法人とJT株価の関係を見ても、やはり外国法人保有比率が下がるほど株価が下がっていると言えます。
※JT有価証券報告書データ(所有者別状況)を筆者まとめ
※株価は各年度の終値
外国法人の動向
外国法人が売っていると言っても、具体的な機関の動向は先ほどの「外国法人株主比率」では分かりません。
そこで、記録が残っている限りの大株主(2~10位、1位は常に財務大臣のため省略)の動向を調べてみました。
海外大株主の動きを見ると、
・2006~2017年までは5~8%であまり大きな動きがない
・2017年に、ステートストリートとシンガポール政府投資公社の2社のみになる
・2018年に、ほぼステートストリート1社に。海外大株主の保有比率急減。
(ただし、ステートストリート社は保有比率ほとんど減らさず)
・2019年、ステートストリート社も保有比率を減らし、大株主は上位7位まで日本勢が占める
となっています。
※※JT有価証券報告書データ(所有者別状況)を筆者まとめ(gifアニメ)
まとめると、JT株の外国法人の保有比率が急速に低下したのが、2017年(先述)。
外国法人のうち、大株主は、2017年まで保有比率にほとんど変化がないが、2018年には逃避を始め、2019年には海外勢の最後の砦だったステートストリートも逃避を始めていることが分かります。
株価はどこまで下がるの?
さて、それではJT株価はどこまで下がるのでしょうか?
先ほどの外国法人保有比率と株価のグラフをもう一度見てみます。
・このままのスピードで外国法人保有比率が下がる
・最終的に外国法人保有比率が10%になる
と"仮定"した場合、2000円を切る水準になってくるでしょう。
※JT有価証券報告書データ(所有者別状況)を筆者まとめ
※株価は各年度の終値
ただし、あくまで外国法人が売り続ける"仮定"です。
2000円というと、キリの良い数字ですから心理的な節目になりますし、これ以上割安になって、外国法人が売り続けるのか?という疑問はありますね。
なぜ外国法人はJT株を売る?
それではなぜ外国法人はたばこ株を売るのか、少し考えてみましょう。
その理由は主に3点です。
・たばこは長期的に見て衰退産業である(喫煙率の減少、課税、健康被害に対する圧力)
・ESG投資(*)の推進により、たばこ株への投資は敬遠されている。
・加熱式タバコでJTが出遅れている(2019年.7月時点でシェア約1割、日経新聞より)。
*ESG投資(GPIFより引用)
ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の英語の頭文字を合わせた言葉です。投資するために企業の価値を測る材料として、これまではキャッシュフローや利益率などの定量的な財務情報が主に使われてきました。それに加え、非財務情報であるESG要素を考慮する投資を「ESG投資」といいます。
ESGに関する要素はさまざまですが、例えば「E」は地球温暖化対策、「S」は女性従業員の活躍、「G」は取締役の構成などが挙げられます。
ESGという言葉が知られるようになったのは、2006年に国連のアナン事務総長(当時)が機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI、Principles for Responsible Investment)を提唱したことがきっかけです。
(引用終了)
ESGという概念は2006年に提唱されていますが、実際に外国法人によるJT売りが始まったのは、2014年です。
たばこ株に影響するまでにはタイムラグがあったということですね。
今後、JTの株価は、「外国法人の売りがどこで止まるのか?」、「日本の金融機関、年金はJT株を買い続けるのか?」にかかっているのではないでしょうか?
※JT株以外にもESG投資やモラルの面から衰退するであろう事業が多数あります。興味がある方はコチラ
おまけ JTってこんな会社
さて、今回はJTの株について書きましたが、私master_kは、JTに特別な思い入れがあります。
なぜなら、私は大学院在学中にJTのたばこ研究職に内定していたからです。
なので、JTの工場見学に行ったり、本社で採用面接を受け、内部の社員の方のことも知っています(と言っても13年も前の話ですが)。
本文の趣旨とは外れますが、おまけとして少しその話をしましょう。
JTの本社は虎ノ門にあり、自社ビルかつ35階建て地上高170mの、それはそれは立派なものです。
私は最終面接でこの本社ビルに入りました。
20数階に受付があり、エレベーターを降りると・・・ワンフロアぶち抜きの応接スペースです。
信じられますか?この規模のビルでまるっとワンフロアぶち抜きですよ。
そこで受付の女性社員に名前と面接の予定を告げると、机に通されます。
出されたの飲み物は温かいお茶ではなく、PETボトル入りのJTのお茶。さすがの自社製品PRです。
また、灰皿も出されます。当時、JTはオフィスでも会議室でもすべて喫煙可能だったからです。
さて、名前を呼ばれてエレベーターに案内されます。
行き先は33階の会議室。
エレベーターを降りると、敷物が違います。分厚い。
重役のフロアらしく、オフィスらしきものはなく、会議室だけが並んでいます。
その中の一室に案内され、しばらく待つよう言われました。
重厚なソファーに座ると、机の上にガラスの容器があります。
なんだこれ?と思って、見ると厚いクリスタルガラス製の入れ物に白いものが入っています。こんな厚いクリスタルガラスは火曜サスペンス劇場の凶器でしか見かけませんね。
ガラスのフタを開けると中に入っていたのは・・・・大量のマイルドセブン!
おそらく100本くらい入っているのではないでしょうか?
その後、もう一人、面接を受ける学生が入室し、しばらくすると人事部長を筆頭に4名ほどのJT社員の方が入ってきました。
めちゃくちゃ、和やかです。
人事部長はあいさつもそこそこに、
「今日が最終面接になりますので、よろしくお願いします。面接官が役員じゃないから君たちも気楽でしょ?」
などとノンキなことを言いながら、エントリーシートを眺め始めます。
妙に芝居がかった仕草で、「あ、すいません。たばこの会社ですので、失礼しますね。」と手を切りながら言い、
ジャケットの胸ポケットの中からたばこを出して、吸い始めたではないですか。
「キミたちも喫煙者??」
私は当時たばこを吸っていたので、「はい、そうです」と言うと、
「遠慮せずに吸いたかったら、吸ってね」と言い、そのまま面接。
私はもちろん、たばこを吸いませんでした。隣の学生もそうです。
「ふーん、master_kくんは ブラジリアン柔術やってるんだ?・・・って、それなに?」
私が、ブラジリアン柔術とは、柔道から派生した格闘技で、柔道と似ているが、投げ技での1本はなく、絞め技か関節技のみで1本が決まり、いちど寝技になれば「待て」がかかることはないのが大きな特徴です。
と説明したところ、
「へぇー、絞め技練習しているの? じゃちょっと隣の彼にやってみてくれる?」と笑顔で言うじゃないですか。
隣の彼は「え?マジで? 俺?」と目で訴えかけてきます。
というわけで、私は「じゃぁ、失礼します」と言って、おもむろに彼の首に手をかけて締め・・・・・るわけない!
丁重にお断りしましたが、終始和やか?いや言っては悪いですが、少しふざけた感じで面接を受け、
「会社の印象はどう?」と聞かれたので、
「JTって元専売公社だから、もっとお硬い感じの会社だと思ってました」とつい本音を言ってしまったのですが、
「え?硬い会社ってイメージなの?全然そんなことないよー」と明るく返されました。
また、2006年当時、今後のビジネスについて「国内の売上高は今後、伸びないので海外への展開に力を入れている。特に中国へ輸出できるようなれば、大きい」と語っていました。
確かに、中国へ展開できれば大きいですよね。紙巻きたばこの世界の需要のうち4割が中国ですから(日経ビジネスより)。
就職活動の結果、私は現在の会社に行くことにしたので、JTに就職することはなかったのですが、
今、たばこ研究職で就職していたら、どうなってたのかなー、と妄想すると、なんだか不思議な気持ちになってきます。
さて、それでは今回の記事は以上です。
M.F.Y!
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