日本株アクティブ型投信の運用実績がインデックスを超えた原因
こんにちは。master_kです。
先日、衝撃的なニュースがありました。
なんと、日本株のアクティブ型投資信託の"平均運用実績"がインデックスを超えたというものです。
それも5年~15年の長期間に渡って、です。
長期的にはインデックスの運用実績がアクティブより良いというのは、もはや投資界隈の常識となっていますが、なぜこのような異常な事態になっているのでしょうか?
今回はそれを検証しました。
結論としては、日本を代表するインデックスであるTOPIXの採用基準、降格基準がゆるく、収益力の低い企業が残存し続けているため、これら企業への投資を避けられるアクティブ型投信の成績の方が良いと考えています。
それでは本文へどうぞ。
目次
アクティブファンドとインデックスの運用実績
先日、日経スタイルで衝撃的な記事がありました。
それは、「日本株のアクティブ型投資信託の平均運用実績がインデックスを超えた」というものです。
●元記事はコチラ
一部のアクティブファンドではなく、"平均値"です。しかも、期間は5年~15年という比較的長い期間です。
●日本株のアクティブファンドの運用実績平均値とインデックス(TOPIX)
1年 | 5年 | 10年 | 15年 | |
TOPIX | -7.5% | 7.5% | 9.5% | 4.0% |
アクティブ | -11.5% | 8.2% | 11.4% | 4.8% |
QUICK資産運用研究所調べを元にmaster_k編集。
投資経験者で知らない人はほとんどいないと思いますが、名著ウォール街のランダム・ウォーカーでも、アクティブはインデックスに勝てない!と盛んに主張されており、
ウォール街のランダム・ウォーカー〈原著第11版〉 ―株式投資の不滅の真理
- 作者: バートン・マルキール,井手正介
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2016/03/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (7件) を見る
インデックス>>(越えられない壁)>>アクティブ というのは、もはや投資界隈の常識となっています。
先ほど紹介したSTYLE NIKKEIの記事によると、<strong日本以外の株式の場合は、やはりインデックスの方が良い成績を上げています。
●海外株のアクティブファンドの運用実績平均値とインデックス
1年 | 5年 | 10年 | 15年 | |
インデックス | 3.3% | 8.0% | 13.9% | 6.6% |
アクティブ | 0.5% | 4.5% | 10.4% | 5.0% |
QUICK資産運用研究所調べを元にmaster_k編集。
日本株のインデックスだけ成績が悪いのは、きっと何か理由があるはずです
インデックスってなんで運用成績が良いの?
そもそも、なぜインデックスの方がアクティブよりも成績が良いのでしょうか?
ウォール街のランダムウォーカーを書いたバートン・マルキールさんによると、以下の2点を挙げています。
・株価はランダムウォーク
過去の株価の推移や、財務から未来の株価は予想出来ない。出来たとしても短期間であり、長期に渡って勝ち続けるのは不可能である。
(テクニカルもファンダメンタルも不十分)
・市場は十分に効率化されている
市場における金融商品の価格は、あらゆる情報を織り込んでおり、価格決定に関わる重要情報が発生しても、市場は即座に価格反映する。これは、ほとんどの投資家より早いため、マーケットの平均以上のリターンを得ることが出来ない。
ほうほう・・・つまり、日本は「特有の理由でこれらが保たれていない」か、もしくは「もっと別な問題がある」から、インデックスがアクティブより悪いのでしょうか。
株価がランダムウォークしない、なんてことが日本だけで起こるなんて考えられません。
なので、「市場が十分に効率化されていない」、あるいは「もっと別な問題がある」のでしょう。きっと。
日米のインデックスの比較
インデックスがアクティブより成績が悪い原因を考察するために、日本とアメリカの代表的なインデックスであるTOPIXとS&P500を比較してみます。
まずは、銘柄の決定者と内容です。
●TOPIX/S&P500の銘柄決定者および内容
S&P500 | TOPIX | |
銘柄決定者 | S&P社 | - |
企業国籍 | アメリカ国籍 | - |
対象市場 | NY証券取引所 NADAQ シカゴ取引所 |
東証一部 |
構成銘柄数 | 上記市場から500社 | 東証一部上場企業全社 (2019.2現在約2130社) |
構成銘柄 の規模 |
アメリカ株式市場の80% | 日本株式市場の80% |
時価総額/株価 | 時価総額 | 時価総額 |
⇒TOPIXは東証一部上場全企業が対象なんですね。あれ?S&P500よりも4倍も企業数が多い?
次に、適格要件です。適格要件というと難しいですが、要するに指数に選ばれるためには以下の要件を満たしなさいということです。
TOPIXの場合は、東証一部全企業が対象なので、東証一部上場の適格要件を記載しています。
●適格要件
指数 | S&P500 | TOPIX |
株主数 | - | 2200人以上 |
流通株式数 | - | 2万単位以上 |
流通株式 時価総額 |
- | 20億円以上 |
流通株式比率 | 50%以上 | 35%以上 |
売買量 | 年間売買代金が時価総額以上であること | 上場前3ヶ月間&さらにその前の3ヶ月間 月平均売買高が200単位以上 |
時価総額 | 82億ドル以上 | 40億円以上 |
純資産 | - | 連結純資産の額が10億円以上 かつ 単体純資産の額が負でないこと |
財務 | 直近四半期が黒字 かつ 直近4四半期の合計額が黒字 |
直近2年間の利益の額の総額が 5億円以上であること |
※なお、東証は適格要件に以下も要求されます
企業の継続性及び収益性:継続的に事業を営み、安定的な収益基盤を有していること
企業経営の健全性:事業を公正かつ忠実に遂行していること
企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性:適切に整備され、機能していること
企業内容等の開示の適正性:適正に行うことができる状況にあること
※東証一部上場の適格要件はこちら
※S&P500の適格要件はこちら
⇒S&P500の方がはるかに大型株であることが分かります。また、S&P500は直近四半期と、直近4四半期合計で黒字を求められますが、日本は2年間で黒字ならOKです。他にも違いがありますが、これじゃ、日本のインデックスがアクティブに負ける説明にはならないですね・・・
最後に降格要件です。これは要するに指数から外れる要件です。
TOPIXの場合は、東証一部全企業が対象なので(以下略)
S&P500は適格条件を1つでも満たさないと降格される可能性があるという厳しい条件です。
TOPIXの降格要件は以下です。
●降格要件(TOPIX)
降格基準 | |
株主数 | 2,000人未満(猶予期間1年) |
流通株式数 | 10,000単位 未満(猶予期間1年) |
流通株式時価総額 | 10億円未満(猶予期間1年) |
時価総額 | 20億円未満となり 9か月(書面提出しない場合は3か月)以内に 20億円以上とならないとき |
債務超過 | 債務超過 (原則として連結貸借対照表による) |
売買高 | 最近1年間の月平均売買高が40単位未満 |
あれ?TOPIX(東証)はたった6項目だけ。しかも上場よりもゆるい基準です。上場時の時価総額は40億円以上求められますが、降格基準は20億円です。
ゆるい。・・・これは、TOPIXの降格基準はゆる過ぎではないですか。非常に降格されにくいですね。
どうやら、ここに問題がありそうです。
降格基準がゆるい影響か、はたまた昇格が多いのか、東証一部は企業の数がうなぎ上りに増えています。その数、28年で倍です。
1990年以降の年末時点の東証一部上場企業数(1990年以前はデータなし)
下記東証データよりmaster_kまとめ
http:// https://www.jpx.co.jp/listing/co/tvdivq0000004xgb-att/tvdivq0000017jt9.pdf
はっはーん、なるほど。見えてきた。日本のインデックスがアクティブに負けた理由は以下ではないでしょうか。
・TOPIX採用銘柄(東証一部上場企業数)がどんどん増え、
・降格条件がゆるいために、ふるいにかけた方がいい企業も残留し、
・昨今のインデックス投資ブームや日銀のETF買入れ、金融緩和で資金が供給されて生かされることで
本来降格されるような企業も、残っている(=新陳代謝が悪い!)ということではないでしょうか?
当然、アクティブファンドはこのような企業の株を買わないでしょう。伸びる企業の予想は難しくても、ダメな企業なんて簡単に分かるからです。
だから、アクティブファンドの平均値がインデックスに勝つような異常な事態が起こるのです。
というわけで、インデックスが否定されたわけではなく、TOPIXの基準がまずい、ということでしょう。
TOPIX(すなわち東証一部の基準)がダメということは、日本の証券関係者も気付いているはずです。
だから、昨今、上場基準の大幅な見直しが議論されているのでしょう。
例えば以下のページで詳しく解説されています。
まとめ
最後にまとめです。
・日本株のアクティブ型投資信託の運用実績の平均値は、インデックスより良い。
・海外株のアクティブ型投資信託の運用実績の平均値は、インデックスより(とても)悪い。
・日本を代表するインデックスであるTOPIXの採用基準はS&P500よりもはるかにゆるい。
・TOPIX採用銘柄は1990年から倍増している(S&P500は1社も増えていない)。
・日本を代表するインデックスであるTOPIXの降格基準もS&P500よりもはるかにゆるい。
・上記の結果、日本のインデックスには収益力の低い企業が残存し続け、これらを避けるアクティブ型投信の成績の方が良いと考えられ
る。
・東証もTOPIXの採用/降格基準がゆるいことに気付いており、見直しを検討している。
そんなわけで、私はTOPIXのインデックス投資は避けた方が良いと考えます(少なくとも上場基準見直しまでは)。
上場基準見直しは、企業にとっては寝耳に水でしょう。今頃、東証一部で低空飛行を続けている企業の幹部は不安な毎日を過ごしているかもしれません。
また株主も東証一部から降格したら大きな売り圧力に晒されて株価が落ちるのでは、と心配していることでしょう(私もそうです)。
なんせTOPIXから外れたらインデックスファンドは強制的に株を売るわけですから。
でも、これこそ千載一遇のチャンスかもしれませんね。「時価総額が基準より低い等」という企業業績には直接関係ない基準で降格して株価が下がった場合は、絶好の買い場だからです。
私は、今のうちに現金を用意しています。
いかがでしたでしょうか?今回はこれで終わりです。
●この記事を読んだあなたには以下の記事もおススメです
※IPOをやるなら初値売りがおススメ。勝率は8割超え・・・こうなるのも上場基準がゆるいから、だよなぁ。
●サイトマップへ